陶山先生によるパイプカットの徹底解説

パイプカット徹底解説

パイプカット徹底解説
「パイプカット」という言葉はよく知られていますが、その手術内容や費用、術後の状態などについてはあまり知られていません。誤解されている部分もかなりあるため、こちらでパイプカットについて、詳しくお伝えします。

はじめに

パイプカットは、男性が避妊方法として受ける手術であり、コンドーム使用や膣外射精に比べると避妊の成功率がほぼ100%と言われている確実な避妊方法です。
妊娠を気にすることなくセックスを楽しむ方法として、パイプカットをお考えになったことがある方でも、身近に経験者がおらず、正しい情報に触れる機会がなければ、なかなか医師に相談してみようというお気持ちになりにくいものです。
そこで、パイプカットとはどんな手術で、費用はどのくらいかかるのか、術後の状態や考えられる合併症、メリットとデメリットなどを具体的にご紹介していきます。

パイプカットの意味

パイプカットは「精管結紮術(Vasectomy)」という正式名称を持っている手術で、妊娠を望まない男性が受ける避妊方法です。望まない妊娠を避けながらより自然な性行為をするためのひとつの選択肢だと考えるといいかもしれません。

精子が運ばれてくる管を手術で切断しますので、射精される精液に精子が含まれなくなるため、ほぼ100%近い確率で妊娠の可能性をなくします。精子は男性の睾丸にある精巣で作られ、管を通って精嚢に運ばれます。精嚢に運ばれた精子は精嚢腺と前立腺から分泌されるものと混ざって精液になります。パイプカットでは、精巣から精嚢へ精子を運ぶ管を外科手術で切断するため。精嚢に精子が貯蔵されなくなり、精液に精子が存在しなくなるのです。

つまりパイプカットは、単純に精液から精子だけをなくすものであり、それまでの性生活と全く変化はなく、身体への害はないと言われています。パイプカットの手術を受けることで成功時にコンドームなどを使って避妊していた方が、それなしに性行為をしても女性を妊娠させる可能性がなくなります。そして、パイプカットは安全で確実な避妊方法というだけでなく、女性の身体には全く負担のない避妊方法でもあります。

妊娠を望まないご夫婦が事前にしっかり話し合いを行った上で、以後子どもを作ることはないと結論が出たら、パイプカットは考慮すべき避妊方法だと言えます。

男性にとって鋭敏な感覚を持つ陰嚢への手術には怖いイメージがあるかもしれませんが、パイプカット手術にはほとんど痛みもありません。これについては後で詳しく解説しています。

パイプカット手術後で気になること

カウンセリングでよく受けるご相談内容について、お答えしています。

射精はどうなるの?

パイプカット手術を受けても射精は今まで通り、全く変わりません。精液は今まで通り出ますし、精液のほとんどは前立腺から分泌されているものであり、精子の量はごくわずかですので量や濃さなどに関しても違いはありません。

妊娠させる機能はなくなるの?

妊娠させる機能はなくなるの?
パイプカット手術を受けると精液に精子が含まれなくなるため、基本的に妊娠させることはできなくなります。パイプカット手術を受けた後、事情が変わって妊娠を望むようになったとしても、切断した管を元に戻す手術はありますが、顕微鏡下で行う難度の高い手術であり、成功したとしても妊娠させる機能を取り戻せる保証はありません。また、精巣から精子を取り出して体外受精を行うことで、再び妊娠が可能になるケースもありますが、自然に妊娠することはほぼ不可能だと言えます。

そのため、パイプカット手術を受ける時には、さまざまなことをしっかり考慮する必要があります。特に奥様のご同意は必須です。しっかり話し合って、決めてください。

お悩みになっている場合には、一度、ご相談にいらしてください。具体的なケースなどをご紹介しながらアドバイスを行い、よりよい決断のためのサポートを行っています。カウンセリングを受けたから必ず手術を受けなければならないということはありません。お気軽にご相談ください。

射精時の快感に変化はありますか?

射精の感覚は手術後も全く変わりがありません。精液に精子が含まれなくなりますが、射精は今までと同じですし、その感覚にも変化はありません。妊娠させてしまうかもしれないという不安がなくなり、より純粋な快感を得ることができるようになったというケースが多いようです。

精力や勃起力はどうなりますか?

パイプカット手術を受ける方は、30代以上の年齢層がほとんどです。勃起不全などの症状が現れはじめる年代であることから、精力や勃起力の減衰をパイプカット手術につなげた迷信もあるようですが、パイプカット手術で男性ホルモンが減少することはなく、精力や勃起力にも変化はありません。そのため、性的能力が減衰したり、損なわれることもありません。

精力や勃起力は精神的なものとも大きく関わっています。望まない妊娠という不安がなくなることで、精力的になる方も多くいらっしゃいます。

パイプカット手術の実際

手術前のカウンセリング

手術前のカウンセリング
ご予約の際、パイプカット手術のための診察とお申し出いただけたら、受付ではお名前をお伝えいただくだけで大丈夫です。
カウンセリングでは泌尿器科の指導医がお話をうかがって、手術についてご説明します。症例写真などをご覧いただき、具体的な例をご紹介しながらわかりやすくご説明しています。
パイプカット手術は安全で確実な避妊方法ですが、それだけに妊娠させる機能の復活はとても難しくなっています。そのため、じっくりお考えになることが重要だと当クリニックでは考えています。お悩みやご不安、疑問など、なんでもお気軽にご相談ください。手術はご本人が納得され、配偶者がいる方はそのご同意をいただいた上でなければおすすめしません。
なお、当クリニックでは1回のご来院でパイプカットの日帰り手術を受けられるよう、電話やメールでのご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

手術内容

パイプカット手術では、陰嚢にある精子を精嚢に送り込む2本の管を切断します。この手術は陰嚢をメスで切り開くのではなく、皮膚表面にごく小さな穴を開けて、そこから精管を引き出して露出させて切除します。

手術前に剃毛と消毒を行い、その後精管を指で確保し、陰嚢皮膚の前面まで持っていき、その状態を保ちながら局所麻酔の注射を行います。陰嚢の皮膚は比較的痛みに鈍感ではありますが、麻酔注射には若干の痛みがあります。

麻酔が効いてきたら、精管の直上に3mmの切開を行います。通常のパイプカット手術では1~2cmの切開が必要ですが、当クリニックでは院長が豊富な経験から導き出した独自の手術方法をとっているため、こうした小さい切開で手術を行うことが可能になっています。

切開したら伸縮性の高い陰嚢皮膚の切開部を鉗子で少し広げ。皮膚直下にある精管を少しだけ剥離して把握し、ピンセットで創外に引き出します。引き出した精管に付属している血管や何層かの膜を取り除いて精管を出させ、5本の糸で結紮し、結紮した間の精管を1~1.5cmだけ切除した上で精管を陰嚢内部に戻します。

皮膚縫合は5-0吸収糸で1針だけ行いますが、この糸は3~4週間で自然に抜けるため抜糸の必要はありません。

手術の所要時間

所要時間は通常30分程度と言われていますが、当クリニックではおおむね15分以内となっています。創が小さく、時間も短いため、お身体への負担もかなり軽くなっています。

入院の必要はありますか?

局所麻酔だけで行える手術ですし、手術後のトラブルもほとんどないため、日帰り手術で受けることが可能です。さらに、手術終了後、リカバリールームで休憩をする必要もなく、手術終了したらすぐにご帰宅されることもできます。また、当クリニックでは土曜日の手術も行っています。そのため、お忙しくてなかなかまとまったお休みが取れない方でも、スケジュール調整に苦労することなく手術を受けていただけます。

なお、遠方から手術を受けに来られる方も多いため、手術後の精液検査を郵送にて行うことも可能になっています。

手術後は?

手術後は?
シャワーは翌日から可能です。ただし、手術後1週間程度は患部を濡らさないようシャワーをしてください。湯船に浸かる入浴は、手術後2週間ほどは控えます。
性行為は手術後1週間程度禁止となります。ただし、精液検査を行って精子がなくなったことを確認するまでは、避妊する必要があります。これは手術前に作られた精子が精嚢に残存しているため、手術後しばらくは精液に精子が混ざっており、妊娠させてしまう可能性があるからです。通常、手術後も10~15回程度の性行為の際にはコンドームなどを使って避妊します。
運動や飲酒では、個人差がありますが、血行が良くなることで患部が腫れたり、出血する可能性があるため、1週間ほど控えると安心です。患部に直接衝撃を加えるようなことは禁止ですし、激しい運動を手術後1週間は避ける必要がありますが、それ以外であれば手術を受けた当日から普段通りの生活が可能です。

精子の確認はどう行いますか?

手術後10回から15回位までの射精には、精液の中に精子が含まれている可能性があるため、精液検査を行うのはそれ以上の回数の射精をした後になります。手術から1ヵ月~1年後の期間に行いますが、遠方で再来院が困難な場合には、前もって専用容器をお渡しし、そこに精液を採取して郵送いただく検査も可能です。

パイプカット手術は、精液に含まれている精子がゼロになったら成功です。パイプカット手術直後は、手術以前に作られていた精子が精嚢に残存しており、手術が正しく行われても精液の検査で精子が確認できます。そのため、精子検査で陰性となるまでは、必ずコンドームなどで避妊してください。

手術後の精子検査で、精液に含まれている精子の数がゼロになったら、以後、射精する精液の中に精子が含まれることはありません。そのため膣内で射精をしても妊娠することはなくなります。

ほとんどありませんが、万が一パイプカット手術が失敗して精子検査がゼロにならない場合、再手術も可能ですが、確実に精子が消失するという保証がないため、他の避妊方法をおすすめする場合もあります。

保険は使えますか?

パイプカットは病気の治療ではないので、保険適用ではなく、自由診療です。そのため医療機関によってその費用は大きく異なります。

費用はどのくらいですか?

パイプカット手術の一般的な手術費用は平均20万円程度ですが、当クリニックでは7万円(税別)で行っています。これは、手術費の他、診察代、薬代、精液検査代等全てが含まれています。

パイプカット手術は安全確実な避妊方法であり、しかも女性の身体への負担が一切ない唯一の方法です。そのため、望まない妊娠の再発を防ぐという目的から当クリニックではこの金額で提供しています。 当クリニックで行われているパイプカット手術は、年間症例数は200件以上を超えています。そのため、安心してお任せいただければと思います。

デメリットや合併症について

術後の痛みや腫れが気になります

手術後は、若干ですが患部に腫れや痛みがありますが、小さな創であり、手術時間も短いため回復も比較的早く、お身体への負担はかなり軽くなっています。そのため日帰り手術が可能なのです。
ただし、日帰り手術では、ご本人がきちんと安静など手術後の注意点をしっかり守ることがより重要になってきます。医師から指示されたことを守りましょう。

状態が落ち着くまでは無理せず、もしも腫れや出血、痛みが強い場合には、すぐにご相談ください。

自然な妊娠はできなくなります

パイプカットは避妊のための手術です。そのため手術を受けてしまうと、性行為で子どもを作ることはできなくなります。避妊の効果は永久的に持続します。パイプカット手術とは、本来そのために行う手術だからです。 手術を受けてから事情が変わって、子どもが欲しくなった場合、切除した精管を再吻合させる精路再建手術を試みることはできますが、再吻合できる保証はなく、再吻合できたとしても精子産生機能が退化しており、妊娠させることは困難になるケースが多いのです。その場合、精巣から直接精子を取り出して、体外受精で子どもを授かったというケースはあります。

手術を受けた時は絶対もう子どもは作るつもりがないと決断しても、事情が変わることはあると思います。精路再建手術については、当クリニックでは行っていないため、他の医療機関をご紹介しています。

パイプカットに性病(性感染症)を予防する効果はありません

パイプカットに性病(性感染症)を予防する効果はありません
パイプカットはあくまでも避妊の方法のひとつです。コンドームなどを使わずに性行為を行っても妊娠させることはありませんが、性感染症を予防することはできません。性感染症にはお薬で簡単に治るものもありますが、他の重大な病気を併発するものや、HIVのようにエイズ発症防止のためにお薬を一生飲み続ける必要があるものもあります。また、母子感染で赤ちゃんに障害が現れるものもあります。せっかく女性の身体に一切負担をかけない避妊方法であるパイプカット手術を受けたのに、感染源になってしまっては元も子もありません。
コンドームは避妊の方法のひとつですが、性感染症を予防する効果もあります。パイプカットを受けたことで妊娠させる心配がなくなって開放的なセックスを楽しむ方もありますが、特定のパートナー以外と性行為をする際には性感染症予防のためにコンドームを必ず使用してください。

パイプカット手術に合併症はありますか?

小さい創ではありますが外科手術ですので、出血や炎症反応が起こる可能性はゼロではありません。パイプカット手術による出血は全体の5%未満、精子が漏出による炎症反応は1%未満にしか起こらないとされています。こうした合併症はほとんどありませんが、手術を受ける方にはもし起こった場合、ただちに当クリニックまでご連絡いただくようにお伝えしています。また、どんな症状であっても自己判断は危険ですから、気になる事がありましたらお問い合わせください。